今日は多数の歯が抜けたあと、いわゆる部分入れ歯を使う場合について紹介します。
インプラントは非常に有効ですが、本数が多くなると金額もかかりますし、部分床義歯もしっかり作れば長持ちしますよ、という症例です。
まず初診時の状態です。
レントゲン等は今回はカットしますが、何本か抜歯が必要でした。
抜歯後の状態です。このまま歯型を取るときもありますが、今回は上の前歯がフレアアウトし(前に飛び出してきている)、上顎のほうが骨が柔らかいので下の歯に突き上げられて移動することが多く、左右2本ずつは連結しました。左上の1本も以下に記す理由で補綴しています。
先に装着後の部分床義歯をお見せします。次にこの義歯を設計した理由を述べます
まずは支持ですが、臼歯部咬合のない欠損なので、しっかりしたレストが必要と考えました。
上顎はパラタルプレートで硬口蓋粘膜にも広く機能圧を負担させるようにしました。
下顎の遊離端部はなるべく頬棚を覆って咬合圧を負担させました。
次に把持を考えます。
下顎は支台間線を考えました。右下はブリッジにせずあえて義歯に含めました。
把持を考える際は外側性把持と内側性把持で考えますが、義歯の設計では特に内側性把持が重要と考えます。
今回のケースでは上顎の歯がバラけていたこともあって3箇所の内側性把持が得られました。
外側性把持はおなじみのクラスプの考え方です。
最後の維持効果はIバーであったり上顎の大連結子であったりしますが、今回は割愛します。
当院は予防歯科をメインにしていますので、歯を削ることはなるべくしておりませんが、今回のケースでは歯の欠損が進んでおり、ここまで来ると歯を削って理想的な形態にしたほうが良かったケースです。
上顎は9歯欠損でしたが、左右対称に歯牙が残っており、安定した設計となりました。
天然歯を補綴することにより、ガイドプレーンを設定し、3つの内側性把持効果を活かして動かない義歯が実現できた。
残存歯の二次固定効果が期待できます。
ちなみにこの患者さんは後日談がありまして、セットからしばらくは検診に通っていただいておりましたが、来られなくなりました。
8年後、訪問診療の依頼があり、自宅で撮った写真です。証明の関係で写りが悪くてすみません。
上顎は全くそのまま残っております。
下顎は歯が移動してしまい、義歯が入らなくなって再製しました。
結果だけ見れば下顎も補綴して連結固定をすればよかったと言えるのかもしれませんが、欠損が広がってないだけ良しとしたいと思います。
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